• 野中さおり

    「53」
  • 恋月

    恋月

    窓には三日月 寝化粧の鏡の奥まで あなたが匂う待ちくたびれて 恋やつれ街の灯りも 夢やつれ 夢やつれ「一緒になろう」と 口癖の嘘に微笑む 不幸ぐせあの夜(よ)は新月 暗闇で初めてあなたの 優しさ知った愛して欲しい ほつれ髪濡れたまんまの 洗い髪 洗い髪何度も何度も もぐり込む胸で一夜(ひとよ)の 舟になる優しいあなたが...
  • 花絆

    花絆

    桜が咲くとき 雪のころ笑顔と涙の 幾春秋(いくしゅんじゅう)あぁ 過ぎた日々 振り向けば苦労の分も 優しくなれる風はまだまだ 冷たいけれど花のように 寄り添い生きる… 花絆秋風吹くとき 花は散る散ってもあとには 実をのこすあぁ 故郷(ふるさと)は あかね色父(ちち)母(はは)暮らす 西空見上げ風はまだまだ 冷たいけれど...
  • 雪すみれ

    雪すみれ

    女ごころの 切なさはたとえば冬の 北の駅雪の花 白い花 おもいでの花抱けばなおさら 儚いものをいつか来る春 待ちわびる……雪すみれ逢えるはずない 人なのにそれでもすがる 恋の花くちびるに おくれ毛に 涙の胸に凍りついてる 花びらだからせめて咲かせて もう一度……雪すみれ雪にかくれた 遠い春ほころぶ夢の 糸ざくら花しずく...
  • 夢かんざし

    夢かんざし

    桜吹雪が 十和田の湖(うみ)に舞えばみちのく 故郷(こきょう)は春だ帰ろうかなあって 思う夜(よ)は都会の暮らしに 泣けてくる父母(おや)も知らない やつれた胸にしのぶ津軽の あかね空ハァ~アア… 花は咲いても 悲しいものは人の別れと エエ…風の笛寒さしのぎに 覚えたお酒何度飲んだか 涙でうめて逢いたいなあって 思う日...
  • 陽だまり坂

    陽だまり坂

    うしろ向いたら 雨あらし無理に笑えば また転ぶ また転ぶ誰も背中は 見えぬからついてゆきます 後ろからよいしょ よいしょ よいしょと 歩きましょ冬の木漏れ日 陽だまり坂を石につまづく 日があれば肩を貸してね ねぇあなた ねぇあなたなんど苦労を 背負っても捨てはしません 夢だけはよいしょ よいしょ よいしょと 歩きましょ...
  • あなたが好きだから

    あなたが好きだから

    あなたが好きだから 気づいて欲しくって意地悪をしてみたの ごめんなさいねあなたはいつだって 気づかないふりしてやきもちを妬かせるの ホントにずるいひとイヤ イヤ イヤイヤよイヤ イヤ イヤイヤよつらい思いは もうイヤよ……あなたがいなければ 明日は来ないからお願いよ よばにいて 心配だからあなたの笑顔には やすらぎ感じ...
  • 夏雪草

    夏雪草

    逢いに行(ゆ)きたい 行(い)ったら駄目と心に私が ふたりいる夏雪草 夏雪草…白い花びら 日陰で咲いてそれでも「しあわせ」 花言葉まるで私ね 似たふたり冬が私で あなたが夏ねかじかむ寒さに 慣れてるの夏雪草 夏雪草…胸がこんなに 熱く燃えてる誰にも言えない もどかしさ夢を持たない 一年草恋の花なら 咲きたいけれど恋には...
  • 天の川恋歌

    天の川恋歌

    恋に焦がれて 鳴く蝉(せみ)の哀れさ感じて 引いた口紅(べに)うすい袷(あわせ)の 帯を解(と)き抱かれた私は 愚かでしょうか夜空にかかる 天の川次の逢瀬は いつですかあした あさって しあさってそれとも逢っては いけない恋ですか窓の向こうの 螢火(ほたるび)をあなたは無邪気に 手ですくういのち短い ひと夏を一途に燃え...
  • いなせだね…

    いなせだね…

    ちゃきちゃき江戸っ子 あのひとは喧嘩早くて 向こう見ずおまけに祭りが 大好きで春は神田で 神輿を担ぎ秋は深川 木遣りを唄う印半纏 気負い肌あぁいなせだね… 町の小娘(むすめ)に モテすぎて嫉妬(やきもち)やいてちゃ 身がもたぬ門前仲町の 若旦那芸ごと遊びにゃ 目がなくて勘当されよと へっちゃら小唄・端唄は まだ序の口で...
  • 愛してブギウギ

    愛してブギウギ

    たかが女と 云うけれど女いなけりゃ この世は闇よ神代の昔は 天照大神(アマテラス)男ひとりじゃ なんにも出来ぬ三味線(しゃみ)で今宵は 唄って踊る愛してブギウギ 愛してブギウギトチチリシャンシャン男嫌いと いう噂好きなお方にゃ 可愛くなれる若さじゃあの娘(こ)に 負けるけど色気三分(さんぶ)に 愛嬌七分(しちぶ)三味線...
  • 宗谷海峡

    宗谷海峡

    鴎が啼(な)いて 日暮れになって岬はたたずむ 人影(ひと)もないここから先は 宗谷海峡女の旅路の 行き止まりさよならあなた お別れしますやっと心が 決まったのひとりで生きると つぶやけば海が…海が… 海が哭(な)きますシベリアおろし ひゅるひゅる吹いて女のこころに 冬が来る凍える胸で 樺太(サハリン)見つめ明日(あした...
  • おひまなら来てね

    おひまなら来てね

    おひまなら来てよネ 私淋しいの知らない 意地悪本当に一人よ 一人で待ってんの酒場の花でも 浮気なんかいやよ来てね来てね 本当に来てよネおひまなら来てよネ 私せつないの知らない 意地悪女は惚れたら 何にもいらないの私の負けなの みんなあんたに上げる来てね来てね 本当に来てよネおひまなら来てよネ 私淋しいの知らない 意地悪...
  • ゲイシャ・ワルツ

    ゲイシャ・ワルツ

    あなたのリードで 島田もゆれるチーク・ダンスの なやましさみだれる裾(すそ)も はずかしうれし芸者ワルツは 思い出ワルツ空には三日月 お座敷帰り恋に重たい 舞い扇逢わなきゃよかった 今夜のあなたこれが苦労の はじめでしょうかあなたのお顔を 見たうれしさに呑んだら酔ったわ 踊ったわ今夜はせめて 介抱してねどうせ一緒にゃ ...
  • 島田のブンブン

    島田のブンブン

    夜のとばりが パラリと降りりゃ祭りごころが 騒ぎだす今日は祇園か 先斗町三味に太鼓に 鳴物ばやしぬる燗ふくんで ひと節はァ誰が呼んだか 島田のブンブン今夜もちょいと ご機嫌さん誰が名づけた 島田のブンブンずいぶん いい気分時計の針が クルリとまわりゃ遊びごころが 疼きだすいまごろ新地か 三ノ宮ピアノギターに マイクを握...
  • 三味でダンスを

    三味でダンスを

    踊っておねがい お座敷だってあなたと踊れば すてきなクラブひと目見てから 好きなの好きようーんうーん せつないこの気持踊って踊って 三味でダンスを踊っておねがい 島田もとって女はよわいの やさしいひとに忘れられなく させてよさせてうーんうーん うれしいこの気持踊って踊って 三味でダンスを踊っておねがい まだよさないでふ...
  • 野暮天さん

    野暮天さん

    うわさ雨降る あなたと私なのに濡れずに ひとり傘じれったいねぇ 野暮天さん粋な小唄か 都々逸(どどいつ)で惚(ほ)の字にさせたい 恋ごころアー スイッチョネ化粧なおして 紅筆ひいて待てば啼きます 夜明け鳥そんなもんですネー七日逢えなきゃ この身も痩せる夜の門前仲町(もんなか) 灯(ひ)もうるむじれったいねぇ 野暮天さん...
  • 別れの桟橋

    別れの桟橋

    あのひとの あの船をまるで隠すよに霧が濃くなる 港町せめて一日 あと一夜(いちや)そばで甘えて いたいのに別れの桟橋 涙の銅鑼(どら)が鳴る縋(すが)りたい 縋れない恋のやるせなさむせぶ霧笛が また泣かす遠い旅路に 疲れたらどうぞ帰って この町に別れの桟橋 みれんの波しぶき倖せな 想い出がそうよ波のよに寄せて返して 渦...
  • 籠の鳥

    籠の鳥

    十年一緒に 暮らしてもこころ通わぬ 男(ひと)もいるたった一度の しのび愛忘れられない 恋もある逢いたくて逢えなくて あふれる涙女…哀しい 籠の鳥やさしい男に 添い寝してほかの男を 想う夜罪と世間に 云われても肌に消えない あの温(ぬく)み恋しさにせつなさに この身も細り焦がれ啼きする 籠の鳥誰かに隠せば 隠すほど熱い...
  • 忘れ雪

    忘れ雪

    寄り添うふたりの 肩に舞う春の淡雪 牡丹雪どんなに好きでも 愛していても逆らえないのね 運命(さだめ)には「さよなら言ってよ あなたから」これが最後の 忘れ雪この手に触れれば 溶ける雪そんな果敢(はか)ない 恋でしたこの次この世に 生まれてきたらこの手に抱きしめ 離さない「今日から他人ね わたし達」二度と逢えない 忘れ...
  • 白夜

    白夜

    忘れてください わたしのことは風の噂も 追わないでひとりの旅の いで湯の宿が今は哀しい かくれ場所あぁ 立待月が みつめるばかりそんなにわたしを 苦しめないで酔えば意地(こころ)が 乱れますあなたと暮す いゝ夢ばかり壊れそうです 女ですあぁ 眠れぬまゝに しらじら朝が歩いてゆきます 今日からひとり強く生きます あの町で...