• 野路由紀子

    「40」
  • 哀愁桟橋

    哀愁桟橋

    つらい恋です 私の恋は髪にかくした 横顔でそっと泣くよな 片想いあゝあの船は もういない風がつめたい 桟橋に残る淋しい ゆらゆら灯りみんな嘘です あなたの言葉連れて行こうか あの港待っているなら それもいいあゝ約束を 抱きながら今の汽笛が 出船とは知らず聞いてた 小雨に濡れて遠い夢です あの日のことはひとつ残った 花束...
  • 愛のきずな

    愛のきずな

    いつか 知らないとこであなたに 抱かれたのいつか 知らないとこで朝が明けるのを みたの目と目があって それだけで愛の誓いが できたのに今では 遠い夢の中ですぎた事みたいどこか 遠いところであなたに 甘えたのどこか 遠いところで愛が燃えるのを みたの手と手がふれて それだけで愛のきずなに 結ばれたそれさえ どこか遠いとこ...
  • 愛のさざなみ

    愛のさざなみ

    この世に神様が 本当にいるならあなたに抱かれて 私は死にたいああ湖に 小舟がただひとつやさしくやさしく くちづけしてねくり返すくり返す さざ波のようにあなたが私を きらいになったら静かに静かに いなくなってほしいああ湖に 小舟がただひとつ別れを思うと 涙があふれるくり返すくり返す さざ波のようにどんなに遠くに 離れてい...
  • アカシアの雨がやむとき

    アカシアの雨がやむとき

    アカシアの雨にうたれてこのまま死んでしまいたい夜が明ける 日がのぼる朝の光のその中で冷たくなった私を見つけて あの人は涙を流してくれるでしょうかアカシアの雨に泣いてる切ない胸はわかるまい思い出のペンダント白い真珠のこの胸で 淋しく今日もあたためてるのに あの人は冷たい瞳をして 何処かへ消えたアカシアの雨がやむとき青空さ...
  • あなたが遠くなる

    あなたが遠くなる

    汽笛が聞こえます 胸が痛みます涙も出ないほどかなしい夜更けですここは旅先き小さな港町思いあふれて手紙を書いてますあの日の別れなら 私のせいです女のあやまちは一度がすべてですだから今さら帰れはしないけどいじめぬかれて今日が覚めました貴方のいたわりを 私に下さいただそれだけで立ちなおれるでしょうもしも貴方がゆるしてくれるな...
  • 雨に濡れた慕情

    雨に濡れた慕情

    雨の降る夜は 何故か逢いたくて濡れた舗道をひとり あてもなく歩くすきでわかれた あの人の胸でもう一度 甘えてみたい行きすぎる傘に あの人の影を知らず知らずにさがす 雨の街角ひえたくちびるが 想い出させるの傘にかくした夜の 別れのくちづけ今は涙も かれはてた頬に黒髪 からみつくだけふりしきる雨に このまま抱かれてあゝ死ん...
  • 踊子

    踊子

    さよならも 言えず 泣いている私の踊子よ ……ああ 船が出る天城峠で 会(お)うた日は絵のように あでやかな袖が雨に 濡れていた赤い袖に 白い雨……月のきれいな 伊豆の宿紅いろの 灯(ともしび)にかざす扇 舞いすがた細い指の なつかしさ……さよならも 言えず 泣いている私の踊子よ ……ああ 船が出る下田街道 海を見て目...
  • 北上夜曲

    北上夜曲

    匂い優しい 白百合の濡れているよな あの瞳想い出すのは 想い出すのは北上河原の 月の夜宵の灯 点すころ心ほのかな 初恋を想い出すのは 想い出すのは北上河原の せせらぎよ僕は生きるぞ 生きるんだ君の面影 胸に秘め想い出すのは 想い出すのは北上河原の 初恋よ...
  • 北国慕情

    北国慕情

    雨が降りそうな朝でした 青森は青森はローカル線を乗りかえながら恋を忘れる旅の果て旅の果て悲しい別れをじっとかみしめ心で泣いたベルが鳴る ベルが鳴るカモメむれ飛ぶ港町 函館は函館はスーツケースが心に重く泣けというよに風が吹く風が吹く青柳町でゆきかうひとにあなたをしのぶただ一人 ただ一人恋の終りかこの岬 知床は知床は沈む夕...
  • 北信濃絶唱

    北信濃絶唱

    流れる雲は 涙色運命(さだめ)の風に 流された夕闇迫まる 信濃路よ二人の愛は いつの日かあゝ いつの日か愛を夢みて 傷ついた清い二人の 悲しみよ千曲の流れ 月の宵涙の露が 光ってたあゝ 光ってた今は寄り添う 山のはてほほえみさえも 残して消える雪の白樺 志賀の里二人の愛よ いつまでもあゝ いつまでも...
  • 京都の恋

    京都の恋

    風の噂を信じて 今日からはあなたと別れ 傷ついて旅に出かけて 来たのわたしの心に 鐘が鳴る白い京都に 雨が降るうしろ姿の あの人は今は帰らぬ 遠い人涙みせたくないの 今日からは一度はなれた 恋なんか二度とはしたくないこのまま死んで しまいたい白い京都に つつまれて恋によごれた女は 明日(あした)から白い京都の 片隅に想...
  • 霧の出船

    霧の出船

    捨てていいのと くちびるかんで肩を落とした 影ひとつランプも暗い 止り木の片すみに そっと名前をかいて泣く流しのお兄さんどうぞ止めてよ その唄はあの人 好きだった 演歌節どうせ待っても 帰って来ない船は男の 恋ごころゆらゆらゆれる こぼれ灯に裏窓を そっと開ければ波の音何んにも聞かないでつらい恋でも 想い出にゃいいこと...
  • 恋月夜

    恋月夜

    あなたが指をさす 空は星月夜背のびしたなら 今にもとどきそうきらきら星くずが 夢の中みたい髪の毛とかして そよ風振り返るきっと私達 こうなるために生まれて来たのね 同じこの町にあなたの肩ごしに 浮ぶ月見草気づけばまわりは一面 花の海幸せすぎるのが 少しこわいからつねってみるのよ こっそり耳たぶをきっと私達 こうなるため...
  • 恋にゆれて

    恋にゆれて

    人に言われ 幸せに気がついた私はかもめよりも お馬鹿さんあなたに悪いわ好き好き でも心配でも大丈夫きっと私 この恋を抱きしめてゆく腕の中で聞いたのは生きている 二人が雲に乗って旅をする愛の調べなのきのうまでは なに気なく言えていた言葉が愛の響き 頬染める胸がつまりそう好き好き でも心配でも大丈夫きっと私 この恋を抱きし...
  • 恋の雪別れ

    恋の雪別れ

    雪の中を黒い汽車が 今遠ざかる会えなかった あの人に手渡すはずの お守り握りしめたままあー ひと目だけ 顔をみて伝えたかったの 恋しさをあー あの人が あー 消えていく吹雪に涙 ちぎれるわ出来るならば 汽車を止めて恋の雪別れ雪の上に赤い椿 散らす花びら当っていた あの人と別れるはずの占い信じられなくてあー 顔の雪 払う...
  • 恋は馬車にのって

    恋は馬車にのって

    雪どけの丘を越え 行くの馬車にゆられ 彼の待つ町へただひとり手作りの 服に熱いこころつつみ 急ぐのよ風はまだまだつめたくて この頬を刺すけれど何もかも今しあわせに 向って走るわ小指のとなりで キラキラ輝く指輪は彼の 約束のしるしなの鈴の音をふりまいて 馬車は行くこの橋を渡ったら すぐに馬車はめざす町へ 入るのよ音を立て...
  • 下町育ち

    下町育ち

    三味と踊りは 習いもするが習わなくても 女は泣けるつらい運命(さだめ)の 花街育ち義理がからんだ 花ばかり母と呼べずに わが子と抱けず嘘とまことで とく紅かなし金が物言う 浮世と知れど金じゃとらない 左褄(ひだりづま)忘れなければ いけない人と知ったあの夜は 袂がぬれる強く生きるの 女の街で秘めてかざした 舞扇...
  • しのび宿

    しのび宿

    明日(あす)の別れを 哀(かな)しむように俄(にわ)か雨ふる しのび宿妻あるあなたに 恋をした運命(さだめ)をどんなに 恨(うら)んでもめぐり逢うのが 遅すぎたひとつ盃(さかずき) お酒を注(つ)いで分けて飲みあう しのび宿あなたがいいよと いうのなら私は死ぬまで 日蔭でも耐えて行く気で いたものをつらい別れに なお更...
  • 忍ぶ川

    忍ぶ川

    哀しみいろの 川の流れに愛という名の橋をかけてくれたのは あなたあゝこのしあわせを 髪に飾ってすべてをあなたに ゆだねます抱きしめて くれますね……やさしさをこめてあなたが受けた 傷のいたみをどうぞ私に分けてそれがあなたとの 絆あゝあなたのために 生きてゆければほかにはなにも のぞまない抱きしめて くれますね……かわら...
  • 十九で別れた港町

    十九で別れた港町

    あなたは旅に出る 私は爪をかむテープが切れる 目が濡れる 船が出るどうしようもない どうしようもないすがって行きたい カモメになれたらつらい恋 この恋 信じた 港町日暮れの鐘が鳴る 背中に風が吹く灯(あかり)がゆれる 目を伏せる 花が散るどうしようもない どうしようもないやさしい言葉が 冷たく残る淡い恋 この恋 祈った...