• 芹洋子

    「84」
  • 白い道

    白い道

    どこまでも 白いひとりの 雪の道遠い国の母さん 今日もお話を 聞いてくださいあれからもう 三年過ぎこの道に また白い雪サラサラ 鳴ります北国の冬はきびしく 辛いけど母さんと 歩いた道はあたたかい 思い出だけれんげの春 トンボの秋忘れません 声をあわせうたった あの歌あしたも この道歩きます ひとりで母さんが 歩いたよう...
  • 月の光

    月の光

    あおい風は 気ままな葦笛(よしぶえ)吹きながらひろげてゆくああ……誰も知らないだろう水色にさえた世界さざなみは ルラララどこまでも ルラララあの ふねにぼくのうたをのせて……遠い国の夜ふけの湖おもてに おもてに揺れている月の光は...
  • はつ夏の潮騒

    はつ夏の潮騒

    耳をすまして まぶたとじれば潮騒のひびきに 心がゆれるはつ夏の海は こわれた夢を限りなくやさしく 沖へつれて行(ゆ)くあの雲にくるまってあの空にとけこんであの潮風と手をとりあえば悩みを忘れるはつ夏の海は こわれた夢を限りなくやさしく 沖へつれて行くあの雲にくるまってあの空にとけこんであの潮風と手をとりあえば悩みを忘れる...
  • 冬の日の子守唄

    冬の日の子守唄

    なぜ憶(おも)いだすのか幼い日のことをあふれる陽の中でやさしいパパとママなにも知らずにすごしたあのころつるくさにからまり左足くじいた夏の日の夕暮泣きじゃくったあたし憶(おも)いでの光いまは遠くに紅いバラはもう咲かない青い鳥も謳わないただ風がふくの紅いバラはもう咲かない青い鳥も謳わないただ風がふくの冬の日の浜辺に十字架を...
  • 星と虹と

    星と虹と

    ごらんよ空の 星がかくれた泣く子が住む町に 星は出ない涙が出そうに なるときにはいそいで悲しみ 追い出そうごらんよ空で 風のほうきもさがしてくれるよ ぼくらの星を行(ゆ)こうよそとへ 虹が出たから虹は雨が描いた きれいな橋まぶしい光に 消えないうちいそいで家から 飛びだそう行(ゆ)こうよそとへ こどものほかはだれも渡れ...
  • 矢車草

    矢車草

    まわれよまわれ矢車草まつげのような花のせて……近づく夏に子つばめもくろいせなかをみせてとぶまわれよまわれ矢車草まぶしくひかる風のせて……とおのく馬車をおうように海のひびきもかけぬけるまわれよまわれ矢車草むかしのままのかずのせて……あの子のすきなむらさきをぼくはかぞえて指に折るまわれよまわれ矢車草背のびに空のいろのせて…...
  • 五木讃歌

    五木讃歌

    木々のかおりに さそわれてこえりゃ山はだ 深い霧鳩も来て鳴く キジも鳴く五ツ木子守の 唄声をきけばヨー きけばヨー椿はらはら 散るばかりさわぐ小風に 耳かせばあの娘お嫁に 行くそうな淡いロマンの 川辺川五ツ木子守の 唄声をきけばヨー きけばヨーこぶし花咲く 村はずれ誰も知らない その昔知るは白百合 恋の花風は過ぎにし ...
  • 俺等の恋

    俺等の恋

    山家育ちの おいらの恋は恋は恋でも テントもってこいだよテントはテントでも おいらのテントは一万尺に 張るテント山家育ちの おいらの恋は恋は恋でも 飯もってこいだよ飯は飯でも おいらの飯は一つの飯合飯 皆の飯山家育ちの おいらの恋は恋は恋でも ザイルもってこいだよザイルはザイルでも おいらのザイルは人と人との 命綱山家...
  • 白い想い出

    白い想い出

    雪が降ってきた ほんの少しだけれど私の胸の中に つもりそうな雪だった幸せをなくした 黒い心の中に冷たくさびしい 白い手がしのびよる雪がとけてきた ほんの少しだけれど私の胸の中に 残りそうな雪だった灰色の雲が 私に教えてくれた明るい日ざしが すぐそこにきているとすぐそこにきていると...
  • シーハイルの歌

    シーハイルの歌

    岩木のおろしが 吹くなら吹けよ山から山へと 我等は走る昨日は梵珠嶺(ぼんじゅうね) 今日また阿闍羅(あちゃら)煙立てつつ おおシーハイルステップターンすりゃ たわむれかかる杉の梢の 未練の雪よ心は残れど エールにとどめクリスチャニアで おおシーハイル夕日は赤々 シュプール染めてたどる雪道 果てさえ知れず街にはちらほら ...
  • スガモリ峠

    スガモリ峠

    ミヤマキリシマ 花かげに咲きて可憐な イワカガミ風にふるえる 峠越え目指す九重の 高き尾根スガモリ峠の 鐘は鳴る霧のあいまに あらわれし尾根の紅葉の 鮮やかさつぶらに紅き コケモモの実は指先に 冷たくてスガモリ峠の 鐘は鳴る三俣の樹氷 仰ぎつつ雪踏み分けて 登る道北の千里に 散り果てし若き命を 哀しみてスガモリ峠の 鐘...
  • 穂高よさらば

    穂高よさらば

    穂高よさらば また来る日まで奥穂にはゆる あかね雲かえり見すれば 遠ざかるまぶたにのこる ジャンダルム滝谷さらば また来る日まで北穂へつづく 雪の道かえり見すれば 遠ざかるまぶたにのこる 槍ヶ岳涸沢さらば また来る日まで横尾へつづく 雪の道かえり見すれば 遠ざかるまぶたにのこる 屏風岩岳沢さらば また来る日まで前穂をあ...
  • 山男小唄

    山男小唄

    流れる汗は あの娘の涙夕べ泣いたよ この胸で街のみれんは 背負(しょ)っては行けぬ捨てて行こうよ 姫川へ 姫川へお山の空と あの娘のこころ風の吹きよで すぐ変るだけど俺等は 浮気じゃないが岩が恋しい 山男 山男そびえる岩も あの娘も同じ俺のハーケン 待っているピーク近いぞ 日ぐれは早い今日の泊りは 鹿島槍 鹿島槍...
  • 山こそ我が母

    山こそ我が母

    登らせてくれる 山があるならぼくはいつでも 山に登ろう山に抱かれる あの感触は母に抱かれる 幼子のよう自然に さからわず自然を たいせつに登らせてくれる 山にむかいてぼくは祈ろう 山のしあわせザレやゴーロは ひとのためにもましてケルンに 感謝をこめてたどれば いただきにたどれば 青い空眼の前は 見渡す限りの雲の海が 広...
  • 山に煙がのぼる

    山に煙がのぼる

    山に煙がのぼる 白い白い煙だ長いまつげとじて 煙になった君よ好きな山の空で どんな夢を見るのか好きな山の空で どんな夢を見るのか山に風がほえる 遠い遠い風だ父や母を呼んで 風になった君よ今は深いねむり 胸でそっと祈ろう今は深いねむり 胸でそっと祈ろう山に花が咲いた 赤い赤い花だ雪の中に消えて 花になった君よせめて高くか...
  • 山は心のふるさと

    山は心のふるさと

    山は山は山は 心のふるさとよ山は山は山は 仲間のふるさとよ雪と岩と森に 生命(いのち)を燃やし明日のために 行こう山へ行こう山は山は山は きみらのふるさとよ山は山は山は みんなのふるさとよ花は鳥と星に 親しみながらみんなとともに 行こう山へ行こうみんなとともに 行こう山へ行こう...
  • 山への祈り

    山への祈り

    雪のはだにそっと 耳をあてれば美しい歌が きこえてくる山の胸にねむる いのちの声か雪の中の谷間 岩のほとりにつつましくゆれる 白い花山の胸にねむる いのちの姿雪もとけて山に 春がめぐればひとすじの煙 立ちのぼるよ山に別れを告げる いのちのこころ...
  • ロマンよ風になれ

    ロマンよ風になれ

    つばさ広げて たわむれる鳥よ北へ進路向けて どこへ行くあかね色した くじゅうの山並み秋が音も立てず 立ち止まるロマンよ風になれ あの人に届け季節をぬり変えて めぐり逢いたい若きくちびる 重ねたあの頃時のうしろ姿 みえてくる語り明かした 友と友の顔遠い物語の 1ページロマンよ風になれ あのひとに届け季節をぬり変えて めぐ...
  • 進め!しんじ君

    進め!しんじ君

    親せきんちのしんじ君生後まだまだ十か月ようやく歩けるようになりママのとこまでよいこらしょママがあやすとしんじ君まるくまあるく笑ってやわらかい手をのばしてママのお鼻をつまんじゃうきみのちっちゃなちっちゃな指でちっちゃなちっちゃな足でちっちゃなちっちゃな耳でちっちゃなちっちゃな瞳(ひとみ)ででっかいでっかい空にでっかいでっ...
  • かなりや

    かなりや

    唄を忘れた 金糸雀(かなりや)は後の山に 棄てましょかいえ いえ それはなりませぬ唄を忘れた 金糸雀(かなりや)は背戸(せど)の小藪(こやぶ)に 埋めましょかいえ いえ それもなりませぬ唄を忘れた 金糸雀(かなりや)は柳(やなぎ)の鞭(むち)で ぶちましょかいえ いえ それはかわいそう唄を忘れた 金糸雀(かなりや)は象...